会社のために、死ねるか?

【今回の本】

『レディ・ジョーカー』高村薫

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レディ・ジョーカー〈上・中・下〉全3冊完結セット (新潮文庫)

90年代、バブル崩壊後の日本では様々なものが壊れ、失われていきました。

その一つに、会社への忠誠心があるんじゃないかと思います。

「会社のために、死んでくれ。」

こういうことを平気で言っていた時代があります。

「仕事に命を懸けろ」

「仕事に責任を持て」

「職場に迷惑をかけるな」

というのも同じ文脈・同じ意味であり

「会社のために、犠牲になれ」ということが求められました。

今でもそういうことがありますが、

大きく揺らいでいます。

揺らぎ始めたのは90年代じゃないでしょうか。

あの時代の、企業、社会、日本という国といった

大きなものに対する不信と絶望の空気を、

すごく上手く書いているのが、高村薫さんの小説

『レディ・ジョーカー』だと思います。

物語の設定は90年代。

グリコ森永事件を参考に書かれた企業恐喝事件の小説です。

ビール会社、警察、マスコミ、などを中心に複数の世界が描かれますが、

民間企業であるビール会社の人間模様は凄くリアルだと思いました。

このリアルさが恐ろしい。

小説全体が描き出す、『日本の構造の暗さ』というようなものは、

どこまでリアルだろうかと、自分の経験を思い出しながら読むと震えます。

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