仕事が苦しい時の1冊
【今回の本】
仕事で苦しいことが続くときに読みたくなる小説、
司馬遼太郎さんの「播磨灘物語」です。
戦国時代の武将、黒田官兵衛の物語ですが、
司馬さんが書くと現代のサラリーマンをはじめ、
集団の中で働く全ての人に刺さる物語になり、
多くの人が身につまされると思います。
苦難の連続の人生です。
その苦難を少し紹介しましょう。
【会社が、俺を罠にかけやがった】
黒田官兵衛、主君から敵に売られます。
具体的なことは本を読んでください。
現代で言うと、勤め先の会社の社長に、
新企画の仕事をしている最中で梯子を外される、
後ろから切りつけられる、というようなことを
黒田官兵衛は主君からされます。
主君との人間関係が悪化したことが原因です。
特に才能のある優秀な人は
注意すべきことが書かれています。
どこの組織でも人間関係の問題はあるもので、
不幸な形で会社を去る人、少なくないです。
「あいつは裏切り者だ」
と言われている人が、実は一番会社のことを大切に考えていて、
我が身を顧みず働いていたのに悪者にされてしまうということ、
自分で経験したり、実例を見てしまった人、
結構多いんじゃないでしょうか?
【こんなに時間を無駄にしてしまった。もう取り返せない】
黒田官兵衛。ものすごく不幸なことに、
牢屋に閉じ込められて長い時を過ごします。
そして体も壊します。回復不能な障害を負います。
「あの男は、もう終わった男かもしれんな。」
というようなことを周りの人間から言われるほどに、惨めな姿になります。
現代でも、病気とかの事情でキャリアを中断することがありますよね?
あるいは左遷されて、主流の仕事が分からなくなるとかありますよね?
周りから
「あの人は、浦島太郎だよ。使い物にならない。」
とか言われたりするかもしれません。
自分でも
「こんなにブランクがあっては、もう自分は無理だ」
と思うかもしれません。
その時点ではそうかもしれない。
でも明日もそのままの状態とは限らないでしょう?
ブランクを逆転して、活躍できる可能性は、常にありますよ。
本気でそう思えるのが、黒田官兵衛の牢屋での生活と脱出後の生き方です。
ブランクで悩んでいる人はぜひ読んでください。
それから、何か失敗して悩んでいる若い人、
受験とか就職活動で失敗した若い人も是非読んでください。
他人より少し遅い進み方でも、人生は良いものになると思えますよ。
【あれほど大きな成果を出したのに、こんなに酷い扱いなの?】
黒田官兵衛、最終的な主君となる豊臣秀吉から、報酬をもらい損ねます。
秀吉のために働き、部下の中で最高と言ってもいい成果を出したのに、
それに対する報酬は微々たるものでした。
このエピソードには組織の中で生きていく人にとって
重要な教訓をいくつも含んでいると思います。
「優れているということは、恐ろしいということだ。」
といったことです。
「この優れた部下が競合他社に転職したらどうしよう?」
というようなことは、組織のトップはどうしても考えてしまうのですね。
しかし、現代の企業の経営者は、秀吉のこのやり方を踏襲してはいけません。
酷い目に合うこと確実ですから、マネしないでおきましょう。
報酬はキチンと払いましょう。
【仕事に期待しすぎない】
苦難と不運の連続だが、面白い人生だったと言えそうな黒田官兵衛の一生。
才能があり、努力したけど運に恵まれなかった男に見えるかもしれません。
ただ恵まれなかったのは仕事運で、別の面では恵まれていたと思います。
ひとつは、家族関係の良さ。
親子や兄弟で本当に殺し合いが起きるのが珍しくなかった戦国時代に、
家族が助け合って生き延びていく様子が書かれています。
それは羨ましいような雰囲気です。
仕事で成功できなくても、
家族が仲良く暮らしていけると言うのは、本当に良いことだと改めて思います。
そういう面があるので、一人ぼっちで仕事に苦しめられている人には、
酷な小説かもしれません。
しかしそういう人も、仕事は人生の一部でしかなく、
仕事の外にも面白さ、幸せがあることを思い出すきっかけになって、
仕事の苦しみから逃れられるかもしれません。
いい小説ですよ。