『翔ぶが如く』司馬遼太郎


新装版 翔ぶが如く 1-10巻 セット

『翔ぶが如く』は

明治維新後から西南戦争の終結後までの時代を

題材に書かれた小説作品です。

負ける組織の特徴であるとか、

満足できる人生とはなんだろうかとか

色々なことを考えさせられる作品です。

特に真剣に考えさせられるのは、

仲間と争うことについてです。

【仲が悪いから、仕事が上手くいく】

取引先の重要人物が、

とつぜん退職していて驚いた経験はありませんか?

世界的に有名で業績も良く、

労働条件も良い会社であっても

奇妙な退職のしかたをする人はいるんですね。

そういう退職はいろんなケースがありますが、

社外でこっそり話を聞くと、

大喧嘩があったというケースが

少なくありません。

外から見ていると、仲が良さそうだったので

実情を聞いて本当に驚いてしまうことがあります。

みなさん、大人だし役者ですね。

人間関係は本当にわかりません。

さらに人間関係の不思議さは

最後には大喧嘩で別れてしまう人の集団、

仲が悪いチームが

凄い業績を上げることがあることです。

なぜ、そういう良い結果になるのか?

思うに、仲の悪いチームですから、

内部の甘えが無くなり、内部競争が激しくなって

結果として

仕事の質が上がるんじゃないでしょうか?

ちょうど、

明治維新の時の薩摩藩と長州藩のように。

【仲良し集団の危うさ】

過去最高の売上と利益を出した。

仕事は上手くいった。

そうであっても、

社内の人間関係は緊張感が常にあり

競争も激しいようだと、

幸福度は低いかもしれません。

仲良く楽しく働きたいという人も多いでしょう。

それは本来良いことなんです。

自分がやりたい仕事を楽しんでやっていくことは

幸せなことだと思います。

問題は「仲良く」です。

「仲良く楽しい集団」というのは

場合によっては、凄く危険な集団になります。

その場の空気に支配されやすいんですよね。

独裁者がいるのと同じ状態です。

反対を許さない。異論を言わせない。

楽しい雰囲気を壊されたくないから

今の居心地の良さを奪われたくないから

反対を許さない。異論を言わせない。

それがとんでもない悲劇を招くことに

なったりします。

スタートアップ企業なんかは特に。

『翔ぶが如く』の中で描かれる

薩摩人の姿を読んでいると、

そんなことを考えさせられます。

【人間であることの苦しさ】

幸せになるために何が必要か?

そう問われたら何と答えますか?

お金持ちになる。

自分の好きなことで成功する。

好きな人と家庭を築く。

などの答えが出そうです。

そういうものを全て手に入れたら

本当に幸せなのかということを

『翔ぶが如く』は考えさせます。

明治維新を成功させた人たち

中でも西郷隆盛と大久保利通の人生を

考えると、人間の幸福というものが

よく分からなくなります。

彼らは、若いころからの目標を達成して

国を代表する立場に立ちました。

結婚していて、子供もいます。

お金もあります。

歴史に名を残してもいます。

それでも

幸せな人生だったとは

言い難いんじゃないでしょうか?

仕事で成功しお金を手に入れ、

幸せな家庭を築いても

消えない悲しみと苦しさがある。

そういう実例を知ることは大事だと思います。

なぜ消えないのかを考えることは、

さらに大事だと思います。


新装版 翔ぶが如く 1-10巻 セット