一番苦しい相続

大問題になっている空き家問題。

相続が関係するものが少なくありません。

実家の相続で苦しんでいる方の話が

よく話題に上がりますが、

実家以上に苦しい相続があります。

事業用の土地建物の相続です。

空きビルの相続です。

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撮影:Takayuki Uchiyama

●最終的にいくらかかるか分からないという恐怖

地方に行くと、

テナントが一つも入っていないビルが

ゴロゴロあります。

今、相続して一番苦しむのはそういうビルです。

地方では駅前の土地でも

現実的な利用価値が無いことがあります。

貸し出しても誰も借りに来ず、

自分で商売をする目途も立たず、

自宅として使うには周辺環境が悪い

といった土地があるんですね。

それでも土地の評価額はそれなりにあるため、

固定資産税の負担が重荷になるのです。

腕の良い土地集約のプロが出てきて

まとめてもらわないと

どうにもならなそうな地域。

そういう地域でボロビルを相続すると、

貸し出しも上手くいかないし

売却も目途が立たない。

動きが取れないのに

固定資産税を払い続けなければならない

という地獄が待っていることがあります。

まず、貸出ですが、最低限の管理がされていて

すぐに貸し出しできる状態でも

借り手が見つからない

ことは珍しくありません。

それが現実ですから

管理されていなかったビルを修繕したとしても

費用だけかかって

お金が全く入ってこないということも

ありえます。相続したほとんどの人が

賃貸を諦めるのも自然なことでしょう。

次に売却ですが、ビルが建っていると売れません。

タダでもいらないと言われることさえあります。

ビルを解体撤去して

更地にする費用が恐ろしいからです。

二つの意味で恐ろしいですよ。

一つは金額が高額になること。

もう一つは、

最終的にいくらかかるかハッキリしないからです。

まず高額になるのは覚悟しないといけません。

建物の構造と大きさによりますが、

坪当たり5万円を切ることはないでしょう。

ちょっとしたビルでも数千万円から1億円の

解体費用が掛かります。

そして高額なうえに、実際に解体工事を進めないと

最終的にいくらかかるかが

分からない場合が多いのが古いビルなのです。

なんでわからないのか。

事前に見積もりするだろう?

と思われるでしょうが、

見積もりしきれない部分があるのです。

ビルの一番下の部分、

土台とか基礎の部分で、

地下構造物と言われる物、

建物の強度を上げるために施工する

杭などの解体撤去が問題になります。

古いビルですと、ビルを建設した

建設会社がすでに倒産して存在していない

ということがあります。

設計図も施工記録も無く、

ビルの土台、地価がどうなっているかは

上を壊してから見ないと分からないことが

あるのです。

図面や記録があっても、実物のビルが

違った状態になっていることもあります。

地震の影響などで地下構造物、杭が壊れて

とんでもない状態になっていたなどというのは

まともな方で、酷いとゴミが埋めてあったり

図面と違う場所に杭が入っていたりと

驚きの連続で、そういったことは

建物上部を撤去してから調べないと

分からんのです。

そういう現実があるので

見積もりしきれないんですね。

予想よりはるかに高い解体工事になってしまい

更地にした時点で大赤字の相続になってしまった

ということもありえるのです。

ボロ物件の解体撤去、実に大変です。

そして解体して更地にしても、評価額で

売れることなどまずありません。

駅前の土地で評価額は高いです。

駅から車で2分の距離です。

などと言っても、

徒歩だと15分の距離の土地

ということになります。

現実的な利用価値は低いです。

大金を使って更地にしても

赤字になるような価格でしか

売れないこともあります。

そういう現実があるので

相続が悩ましいことになる場合があるのです。

空きビルを最終的にどうできるのかの

目途が立たないのに

預金が3000万円くらいあったりすると、

相続すべきか、相続放棄すべきか

本当に悩むでしょう。

解体費用だけで4000万円かかるけど

評価額1億円の土地が残るんだから

損はしないだろうなどと思って相続すると

土地が売れないまま、毎年100万円の

相続税の支払いが続くようなことも

ありえます。

ただ、そんな風になる可能性があっても

最初から3000万円の預金の相続を一緒に

諦められるか?

ということです。

相当切実な悩みでしょう。

その悩みにビジネスチャンスを見る人が

出てくるか?

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●一番求められているのは地上げ屋さん

空きビルが沢山あるような地域で、

今一番求められているのは地上げ屋さん、

穏やかな言葉にすると

土地集約の専門家でしょう。

築50年、60年のボロボロのビルの解体費用と

土地の評価額分の価値を新しく生み出すには

大規模開発しかないようです。

そのために土地を集約してもらう必要があります。

6つある小さなビルを撤去して

1つの大きい新しいビルを建てるしかないという

話をあちこちで聞きますね。

役所の影響力が大きいでしょう。

空きビルだけじゃなく空き家も含め

地方で不動産を買おうとするなら、

個別の物件を詳しく調べるだけでなく

その地域を調べるべきでしょうね。

その地域の役所の能力と姿勢によって

不動産の価値が大きく変わっていく

時代になりつつあるような気がします。

地方はどこもダメということはありません。

これから大きく伸びる地方が出てくるでしょう。

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●財産とは何だろう?

それにしても

財産というのは何でしょうね?

あれだけ高かった家が無価値になり

評価額があり、固定資産税を取られている

土地がタダでもいらないと言われてしまう。

不動産を持って大家になれば一生安泰

などと言われた時代もありましたが

不動産を持っていることで苦しむ

現実を見ると、本当に財産と言えるものが

分からなくなりますよね。

空き家、空きビルだけじゃなく

倒産した会社の工場やホテルなどもあります。

その中には無責任な私有財産というしかないものも

あって、最近では私有の責任を厳しくすべきという

声もあり、全ての土地を公有化すべきという主張も

あります。高齢者の住宅問題などと合わせて

公営住宅の整備と個人住宅の制限をいう人も

あります。

変わるときは一気に変わるのが世の中です。

長期投資が基本の不動産ですが、

フットワークは軽くしておく方が

良いかもしれませんね。

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